実際には国や自治体に帰属することはない
新型コロナが発生してから4年以上がたちました。
コロナ禍ではクリニック・薬局も大幅に収入が減少しましたが、5類に変更になった後もコロナ以前のような収入は戻らず、廃業を選ぶ先生も多くなってきています。
2023年度の医療機関の休廃業・解散件数は過去最高となりました。
個人クリニックや薬局は問題無いのですが、医療法人の場合、残った財産が問題となります。
よく、国や自治体に帰属すると言われますが、実際には残余財産を残さない対策を取り、国や自治体に帰属することはまずありません。
残余財産をどうやって個人へ移す?
残余財産を残さないためによく取られる対策としては、
1.理事長・理事(親族)へ退職金を支給
2.理事長・理事(親族) の役員報酬を増額
が挙げられます。
役員報酬は税率が高くなりますが、退職金は優遇されておりかなり税率を低く抑えることができますので、同じ金額を役員報酬で毎月もらうより、退職金でもらった方がかなりの節税となります。(税率で30%以上の差がつくこともあります。)
1の退職金が対策の基本となります。
役員の退職金は、
解散時(退職時)の役員報酬の月額×勤続年数×功績倍率
で計算します。
功績倍率は、理事長であれば3倍、理事長以外の理事は2倍前後が目安となります。
(功労加算金を30%程度加算できる場合もあります。)
役員報酬300万円、勤続年数20年の理事長の場合、
300万円×20年×3倍=1億8,000万円
となります。
ただし、医療法人の財産を減らしたいからといって、解散時(退職時)の直前に役員報酬を増額したりすると、税務署に否認されるリスクがかなり高くなります。
その為には、医療法人の解散時期を見越し、計画的に進めることが大切です。
最低でも3年、できれば5年前には動き出したいところです。
まとめ
現実的には、近年、医療機関のM&A市場が盛んですので、解散をするより事業譲渡・事業承継を選ぶ先生方がほとんどだと思います。
この方法は、医療法人の解散以外にも
・持分ありの医療法人の出資持分評価対策
・持分なしの医療法人の事業譲渡・事業承継時の残余財産対策
などにも使える有効な対策です。
基本的な対策ですが、早めに動き出すことによって、状況に応じた修正も可能なため、絶大な効果を得ることができます。
将来を見越し早めに動き出すことが何より大切です。