ヒヤリハット、インシデント、アクシデントって違うの?
医療業界でよく聞く用語として、
「ヒヤリハット」
「インシデント」
「アクシデント」
があります。混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。
ヒヤリハット
事故は起きていないが、ヒヤッとしたり、ハッとした状態を指します。
人間の意識・感情から生じる状況です。
例えば、
「薬の点滴をする際に、違う薬を入れてしまいそうになったが、入れる直前でハッと誤りに気づいた」などの状況です。
インシデント
事故にはならなかったが、あと一歩で事故になっていた状態を指します。
上記の例でいうと、
「薬の点滴をする際に、実際に違う薬を入れてしまったが、患者に健康被害はなかった」
などの状況です。
人間の意識・感情からくるものではなく、起きてしまった状況を指すもので、起こしてしまった本人も危険性に気づいていない可能性もあるところがヒヤリハットとの大きな違いです。
アクシデント
不幸にも事故が起きてしまった状態を指します。
上記の例でいうと、
「薬の点滴をする際に、実際に違う薬をいれてしまい、患者が亡くなってしまった」
などの状況です。
結果に違いはあるものの、クリニック・薬局としてはどれも未然に防ぐべきもの、ということに変わりはありません。
ヒヤリハット事例、医療事故情報の活用
公益財団法人日本医療機能評価機構では、ヒヤリハット事例や医療事故情報を公表しています。
クリニック・病院用
薬局用
に分かれておりますが、共に条件を指定して事例検索ができるようになっています。
検索結果をPDFやCSVで出力できるようにもなっておりますので、スタッフさんの教育に活用してみてはいかがでしょうか。
専門家に依頼し、自局・自院にあったリストを作成してもらうのもよいでしょう。
せっかく公表されている情報ですので、うまく活用していきましょう。
調剤ミスにより遺族がスギ薬局及び薬剤師を提訴
最後に、最近ニュースになったスギ薬局の調剤について簡単にまとめてみます。
ニュースなどでも大きく取り扱われた為、ご存知の方も多いかもしれませんが、2024年8月28日に、74歳の女性が死亡したのはスギ薬局の調剤ミスが原因だったとして、遺族が約3,800万円の損害賠償を求めてスギ薬局及び薬剤師3人を提訴しました。
概要を簡単にまとめますと、
2021年10月18日、74歳の女性が訪問診療で持病の薬を処方され、その処方箋を東京都杉並区にあるスギ薬局にFAXして調剤を依頼。
スギ薬局の薬剤師がその処方箋をもとに、分包(薬を1回飲む分ずつ小分けにすること)作業を機械で行い、スギ薬局の従業員が女性の家に薬を届けた。
受け取った薬をしばらく服用していたところ、2021年11月15日に意識を失って病院に入院。
病院の薬剤師が残っていた薬を調べたところ、女性の持病とは関係ない糖尿病の薬が2種類混入していたことが判明。病院から指摘を受けたスギ薬局は、女性側に持病とは関係のない別の薬が混入していたことを伝えた。
スギ薬局が調査を実施したところ、分包する機械に直前に作業をしていた別の患者の糖尿病の薬が残っており、女性の薬に誤って混入した可能性があることが判明。
通常、分包を担当した薬剤師とは別の薬剤師が、薬の種類・数を処方箋と照らし合わせて間違いがないか確認する「薬剤鑑査」が行われるが、見逃されてしまった。
女性は低血糖脳症と診断され、意識が戻らないまま2022年5月2日に心不全により74歳で亡くなった。
混入した糖尿病の薬は、重篤な低血糖を引き起こす恐れのある、高齢者には避けるべき(禁忌)とされている薬だった。
以上が概要です。
薬局による事例ですが、このように、クリニック・薬局においては、人為的なミスが不幸な結果につながることがあります。
けっして他人事と思わず、医療業界内で起きた事故事例を教訓にすることが大切です。
自院・自局内で定期的に研修などを実施し、医療スタッフさんの意識改革を促すことが結果的に医療事故を減らすことにつながります。